会長(運営委員長)からのメッセージ
基礎と臨床をつなぐ行動科学
日本行動科学学会 会長
松田 英子 (東洋大学)
行動科学(Behavioral Science)とは、人間の行動に関する一般法則を体系的に究明しようとする学際的分野であり、より良い適応過程にむけた行動の予測と制御のために、人間行動に関する知識を応用する実践科学であります。その歴史はけして浅くはなく、行動を総合的に科学する学会として1960年に「異常行動研究会:(Personality and Behavioral Disorders, PBD)」が設立されました。1993年には日本行動科学学会として発展的に改組し、日本学術会議の活動に参加する学術団体として現在に至っています。
本学会の会則にもあるように、本学会は行動の基礎研究及び応用的研究に関心を有する者が相互の連携共同により、動物の行動をモデルとした基礎理論とその臨床的応用の進歩をはかることが活動の目的であります。設立当初から行動の基礎研究と臨床場面や応用場面での行動とを相互に連携させることを重視し、基礎的な実験を主とする研究者は臨床や応用場面に目を向ける場として、臨床場面を主とする研究者は基礎に目を向け、65年の歴史を歩んできました。本学会で発表される研究の内容は、行動の生物学的理解から、心理社会学的理解まで幅広く展開されています。
以下は歴代会長の津田彰先生が掲げ、坂田省吾先生、内山伊知郎先生が引き継いだ日本行動科学学会のあるべき姿です。設立当初からのアカデミックなサロンの雰囲気を残しながら、社会に貢献できる行動科学の学術交流の場としていきたいと思います。
学会の運営にあたり、会員の皆様や関連諸領域の皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。
◯ディシプリン*としての行動科学と学会の将来ビジョン
(1) 行動科学という学問に対するアイディンティティの確立
(2) あるべき姿、行くべき方向、すべきこと、社会貢献の模索
(3) 会員が行動科学の目標に向かう研究と実践を遂行できるような支援
(4) 若手研究者の育成
*Discipline(ディシプリン): 「弟子、門人の教育」から転じて、鍛錬・修養、専門分野・学問分野などの意。
○研究活動の活性化
(1) 隣接領域との共同研究の推進、セミナー、シンポジウム、研修会の共催
(2) 会員の自主的な研究グループの推進と支援
(3) 学会誌のさらなる質的向上(招待論文、海外研究者からの総説等)
○開かれた学会運営
(1) 運営委員会や専門委員会の活動の活性化
(2) 地区委員会のネットワーク化